2025年クリスマス朗読企画 / 小さな再スタートに寄せて

約八年ぶりの「八焔座」としての企画。

以下のコラムに、座長・菊地と副座長・朝戸より、

近況を含めたご挨拶文を掲載しています。

 

「まず経済を整えよう」

「力を蓄えよう」

 

そう決意して水面下で走ってきた私たちですが、

あくまで演劇人としての施策であり、演劇人としての志を絶やすことなく、ここまで参りました。

 

また劇場で再スタートを切る日を見定めながら、来年も駆けたいと思います。今後ともよろしくお願い致します。


座長 菊地史恩より

こんにちは。

八焔座座長の菊地史恩です。

 

こうして皆さまの前に言葉を差し出すのは、SNSも含めて実に8年ぶりになります。

その間、皆さまはどんな時間を過ごしてこられたでしょうか?

転職、結婚、出産、別れ・・・。

それぞれの人生を、それぞれのやり方で生き抜いてこられたことと思います。

 

私自身の8年間は、暗闇の中を手探りで進むような時間でした。

言葉を書くことからも、舞台からも距離を置き、

かつて鍛えた身体も、磨いた言葉も、錆びていきました。

それでもひとつだけ、消えなかったものがあります。

演劇への情熱です。

 

小学6年生で観た舞台が、私の人生の向きを決めました。

19歳で上京し、唐十郎さんとの出会いで、人生においての自分の役割を決めました

多くの出会いと別れを経て、27歳で一度、演劇から離れ、そして今、35歳でこの場所に立っています。

 

この8年間がなければ、

今回の作品『イノリバコ』は生まれなかったと思います。

後悔もあります。

けれど今は、その後悔さえも感謝へと変わりました。

 

宗教的な意味合いはありません。

誰かの何気ない一言が、いつの間にか人生の“呪い”になってしまうことがあります。けれどそれが、時間や経験を経て、未来への“祈り”に変わる瞬間があるのではないか。

そんな問いを、この作品に込めました。

 

もちろん、そうなると断言することはできません。

ただ、いつかそうなるかもしれない。その祈りとともに、この作品を書きました。

 

12月24日、ワンステージ、客席は20名ほどとお会いできる方は限られていますが、もしこの作品が、

触れていただいた方の心に、少しでも響くものがあれば嬉しく思います。

副座長 朝戸佑飛より

 

皆様お久しぶりです。朝戸佑飛です。

といっても、ほぼ初めましての方々ばかりが、この文章に触れてくださっているのではと思います。

 

現在、僕が34歳、史恩さんが35歳です。10代後半から25,26歳まで芝居を作り続けてきました。芝居だけではなく、イベントプロデュースなども含め絶え間なく企画し続けた20代前半でした。そこからピタリと活動を止めて、今に至ります。

 

史恩さんが全く「今の私たち」を表現しない文章を出してきやがりましたので、僕の方から簡単に、この空白の意味と現在地を話します。僕の場合は史恩さんと違いSNS等でも発信しているので、知ってくださっている方もいらっしゃるかもしれません。

 

端的に申し上げて、芝居のために、芝居を我慢して、芝居を夢見ながら、私たち、必死で稼いで参りました。(拍手)

今は二人合わせて、毎月継続的な資金投下ができるだけの「金銭的戦力」と、その基盤を獲得したと自負しています。

 

上手いだけでは売れない。素晴らしいだけでは戦えない。

劇団単位にせよ、俳優目線にせよ、あるいは監督だろうが演出家だろうが、すべてのパフォーマーに言えることです。

当然ながら芸術を磨く、マネジメントやプロモーションを学ぶ、人脈構築を行う、リピート率の高いコアファン層の獲得、様々な必須アプローチがあるなかで、私たちが選択したのは「まず経済基盤を構築する」ことでした。

 

もちろん経済があればなんとでもなる世界ではありません。そんなに甘くはない。

演劇的には最も油が乗っている20代後半を、芸術的研鑽に充てるべき大切な時間を、本当にこの方向へ費やして良いのか?

葛藤もありました。とはいえ僕の場合は起業もしていましたし、そもそもこの劇団での役割がそういったプロデュースや企画立案、システム構築でしたから、長期的資金繰りという観点で違和感はありませんでした。

しかし座長は抵抗感もあったことでしょう。それでも信念を持って決断してくれて、今があります。

 

久々に代々木のCafe' nookでのクリスマス企画。8年ぶりに触れた座長の脚本、文章は、錆びるどころかより洗練されていました。己を律してビジネスに向き合い、演劇だけをやっていてはまず出会えない多数の人々に触れ、責任を負い、人を率いて走ってきた歴史が、確かに文章に生きていました。

ここに至り確信したこと、それは、決して遠回りなどではなかったということです。

 

今回のクリスマス企画を皮切りに、少しずつ演劇の世界に戻っていくつもりです。そう遠くない先で、本公演のご案内もできたら嬉しいです。その際は、本当にゼロからの再スタートになることでしょう。蜷川幸雄さんと出会い、演劇に救われ、演劇を愛してきました。それは今もこれからも変わりません。どうか楽しみに、お待ち頂けたら幸いです。

 

最後に今回の企画は、俳優・永友春菜さんのお力を頂いています。

実は小学校からの幼馴染でして、これまでご一緒することはありませんでした。本当に不思議なご縁を感じています。

たくさんの繋がりと、まだ気づいていない人生の伏線。それらを回収していく旅がこれからまた、始まります。

どうぞほんの少しでもご一緒してくださることを祈って、ご挨拶とさせて頂きます。