約八年ぶりの「八焔座」としての企画。
以下のコラムに、座長・菊地と副座長・朝戸より、
近況を含めたご挨拶文を掲載しています。
「まず経済を整えよう」
「力を蓄えよう」
そう決意して水面下で走ってきた私たちですが、
あくまで演劇人としての施策であり、演劇人としての志を絶やすことなく、ここまで参りました。
また劇場で再スタートを切る日を見定めながら、来年も駆けたいと思います。今後ともよろしくお願い致します。
座長 菊地史恩より
こんにちは。
八焔座座長の菊地史恩です。
こうして皆さまの前に言葉を差し出すのは、SNSも含めて実に8年ぶりになります。
その間、皆さまはどんな時間を過ごしてこられたでしょうか?
転職、結婚、出産、別れ・・・。
それぞれの人生を、それぞれのやり方で生き抜いてこられたことと思います。
私自身の8年間は、暗闇の中を手探りで進むような時間でした。
言葉を書くことからも、舞台からも距離を置き、
かつて鍛えた身体も、磨いた言葉も、錆びていきました。
それでもひとつだけ、消えなかったものがあります。
演劇への情熱です。
小学6年生で観た舞台が、私の人生の向きを決めました。
19歳で上京し、唐十郎さんとの出会いで、人生においての自分の役割を決めました
多くの出会いと別れを経て、27歳で一度、演劇から離れ、そして今、35歳でこの場所に立っています。
この8年間がなければ、
今回の作品『イノリバコ』は生まれなかったと思います。
後悔もあります。
けれど今は、その後悔さえも感謝へと変わりました。
宗教的な意味合いはありません。
誰かの何気ない一言が、いつの間にか人生の“呪い”になってしまうことがあります。けれどそれが、時間や経験を経て、未来への“祈り”に変わる瞬間があるのではないか。
そんな問いを、この作品に込めました。
もちろん、そうなると断言することはできません。
ただ、いつかそうなるかもしれない。その祈りとともに、この作品を書きました。
12月24日、ワンステージ、客席は20名ほどとお会いできる方は限られていますが、もしこの作品が、
触れていただいた方の心に、少しでも響くものがあれば嬉しく思います。
副座長 朝戸佑飛より
皆様お久しぶりです。朝戸佑飛です。
といっても、ほぼ初めましての方々ばかりが、この文章に触れてくださっているのではと思います。
現在、僕が34歳、史恩さんが35歳です。10代後半から25,26歳まで芝居を作り続けてきました。芝居だけではなく、イベントプロデュースなども含め絶え間なく企画し続けた20代前半でした。そこからピタリと活動を止めて、今に至ります。
史恩さんが全く「今の私たち」を表現しない文章を出してきやがりましたので、僕の方から簡単に、この空白の意味と現在地を話します。僕の場合は史恩さんと違いSNS等でも発信しているので、知ってくださっている方もいらっしゃるかもしれません。
端的に申し上げて、芝居のために、芝居を我慢して、芝居を夢見ながら、私たち、必死で稼いで参りました。(拍手)
今は二人合わせて、毎月継続的な資金投下ができるだけの「金銭的戦力」と、その基盤を獲得したと自負しています。
上手いだけでは売れない。素晴らしいだけでは戦えない。
劇団単位にせよ、俳優目線にせよ、あるいは監督だろうが演出家だろうが、すべてのパフォーマーに言えることです。
当然ながら芸術を磨く、マネジメントやプロモーションを学ぶ、人脈構築を行う、リピート率の高いコアファン層の獲得、様々な必須アプローチがあるなかで、私たちが選択したのは「まず経済基盤を構築する」ことでした。
もちろん経済があればなんとでもなる世界ではありません。そんなに甘くはない。
演劇的には最も油が乗っている20代後半を、芸術的研鑽に充てるべき大切な時間を、本当にこの方向へ費やして良いのか?
葛藤もありました。とはいえ僕の場合は起業もしていましたし、そもそもこの劇団での役割がそういったプロデュースや企画立案、システム構築でしたから、長期的資金繰りという観点で違和感はありませんでした。
しかし座長は抵抗感もあったことでしょう。それでも信念を持って決断してくれて、今があります。
久々に代々木のCafe' nookでのクリスマス企画。8年ぶりに触れた座長の脚本、文章は、錆びるどころかより洗練されていました。己を律してビジネスに向き合い、演劇だけをやっていてはまず出会えない多数の人々に触れ、責任を負い、人を率いて走ってきた歴史が、確かに文章に生きていました。
ここに至り確信したこと、それは、決して遠回りなどではなかったということです。
今回のクリスマス企画を皮切りに、少しずつ演劇の世界に戻っていくつもりです。そう遠くない先で、本公演のご案内もできたら嬉しいです。その際は、本当にゼロからの再スタートになることでしょう。蜷川幸雄さんと出会い、演劇に救われ、演劇を愛してきました。それは今もこれからも変わりません。どうか楽しみに、お待ち頂けたら幸いです。
最後に今回の企画は、俳優・永友春菜さんのお力を頂いています。
実は小学校からの幼馴染でして、これまでご一緒することはありませんでした。本当に不思議なご縁を感じています。
たくさんの繋がりと、まだ気づいていない人生の伏線。それらを回収していく旅がこれからまた、始まります。
どうぞほんの少しでもご一緒してくださることを祈って、ご挨拶とさせて頂きます。
